見守りのデジタル化は、「センサーを入れるかどうか」よりも、「導入後に使われ続けるか・回し続けられるか」が最大の壁になります。対象者の参加が集まらない、現場の対応が逼迫する、効果を示せず次年度予算につながらない。
こうした実務課題を前提に、本記事では論点を整理しました。
見守り施策を「継続させる」ための住民接点 | モバイル商品券プラットフォーム byGMO
高齢者見守りのデジタル化は、機器・通知体制だけでなく、「住民が使い続けられる動機づけ」と「自治体側の運用負荷を増やしすぎない設計」が成否を分けます。そこで有効なのが、給付・参加促進の基盤として活用できるモバイル商品券です。
デジタル給付で「参加のきっかけ」をつくる
例えば、見守りサービス登録時のインセンティブ付与、熱中症対策(飲料・冷房関連等)への限定給付、買い物支援との一体運用など、施策目的に沿った設計で住民の参加を促進できます。
利用実績を可視化し、効果検証と改善につなげる
配布後の利用状況を把握しやすく、施策の到達度や設計(対象・金額・加盟店)の見直し材料を得られます。見守り単体では評価が難しい部分を、周辺施策のデータで補助できます。
地域店舗を巻き込み、見守りの周辺支援を厚くする
加盟店ネットワークを通じて、生活支援・外出機会の創出・地域との接点づくりを設計しやすくなります。結果として「見守り+生活支援」のパッケージ化が可能になります。

高齢者見守りサービスとは | デジタル見守りの定義
高齢者見守りサービスとは、ひとり暮らし等の高齢の方の日常の様子を、離れた場所から継続的に把握し、異変の早期発見につなげる仕組みを指します。
近年は、次のようなデジタル技術を活用した「デジタル見守り」が広がりつつあります。
高齢者見守りサービスの具体例とは?
IoTセンサー
自宅のドア開閉、電気・ガス・家電の使用状況、室温などを自動で取得し、一定時間動きがない場合に通知する仕組みです。
見守りアプリ・通話システム
スマートフォンや専用端末のアプリでの安否確認ボタンの操作、または一定間隔で実施する自動電話と音声応答により、利用者の日々の状況を確認します。
その他のデジタル手段
宅配・電力会社・郵便などの訪問履歴をデータ連携し、生活の変化を把握する取り組みも見られます。
訪問型見守りとの違い
従来の見守りは、民生委員や地域のボランティア、宅配事業者などによる訪問・対面の確認が中心でした。
一方、デジタル見守りには次のような特徴があります。
- 日常の状態を「頻度高く」「自動的に」把握できる
- 異変を検知したタイミングで、電話・訪問等のアナログ支援につなげられる
なぜ今、高齢者見守りのデジタル化が求められるのか
独居高齢者の増加と見守り人員の不足
単身や高齢者のみ世帯の増加により、見守り対象者は着実に増えています。一方で、民生委員や地域ボランティアの高齢化、福祉職員の人財不足が進んでおり、従来と同じやり方だけでは継続的な見守りの維持が難しくなりつつあります。
デジタル見守りは「訪問頻度を減らす」ことが目的ではなく、「限られた担い手で、できるだけ多くの方を継続的に支える」ための手段として検討されることが増えています。
自治体DX推進との関係
デジタル庁が示す「自治体DX推進計画」では、福祉分野におけるデジタル活用も重要なテーマとされています。
高齢者の見守りは、次の観点から自治体DXの取り組みとして位置づけやすい分野です。
- アナログ業務(電話・訪問記録・台帳管理)のデジタル化
- 見守りデータを活用した予防施策・政策立案
- 地域包括支援センター、福祉部局、情報政策課の連携による仕組みづくり
福祉施策の充実と行政事務の効率化を同時に進められるテーマとして、庁内でも検討が進めやすいと言えます。
参考:総務省|自治体DXの推進
孤独死・熱中症等の社会課題
ひとり暮らしの高齢の方が、体調悪化や転倒、熱中症などで誰にも気づかれないまま重篤化する事例は、多くの地域で課題となっています。
デジタル見守りは、こうした事案を完全に防ぐものではありませんが、次のような観点で有効と考えられます。
- 一定時間の動きがない、エアコンがついていない等の「異変の兆し」を早めに検知する
- 電話や訪問につなぐトリガーを増やすことで、発見までの時間を短縮できる可能性がある
- 日常の生活データをもとに「熱中症リスクが高い居室環境」などを把握し、事前の声かけや支援につなげる
デジタル見守りのメリット
運営側(自治体・関係機関)にとって
訪問負荷の軽減と優先順位付け
全対象者に同じ頻度で訪問するのではなく、「異変の兆候がある方」「生活リズムが大きく変化した方」などを把握し、訪問の優先順位をつけやすくなります。
これにより、現場負担を抑えつつ、必要な方への支援に時間を割くことが期待できます。
異変の早期検知
センサーやアプリが常時データを取得することで、平日日中だけでなく、夜間や休日を含めて状態変化に気づく可能性が高まります。
一定時間動きがない、室温が危険な水準に近づいている等の情報が通知されれば、早めの電話・訪問につなげる判断材料になります。
データ蓄積による予防施策の検討
個々の事案対応だけでなく、地域全体の傾向(例:夏場にエアコン使用が少ない世帯の割合や、夜間の活動が多い傾向など)を把握することができます。これにより、熱中症予防や生活支援に関する施策立案の材料として活用できます。
利用者側(見守りを受ける方・家族)にとって
プライバシーへの配慮
頻繁な訪問や電話は、安心につながる一方で、負担感やストレスにつながることもあります。
デジタル見守りでは、日常の行動を細かく「監視」するのではなく、一定の異変があった時にのみ通知する設計とすることで、生活リズムを守りつつ、必要なタイミングで支援を受けやすくなります。
緊急時の迅速な対応につながる可能性
従来は、数日間誰とも連絡を取っていないことが気づきのきっかけになるケースもありました。
センサーや自動架電の仕組みにより、「いつもと違う状態」が早めに可視化されれば、早期の電話確認や駆け付けの判断がしやすくなります。
家族等の安心材料
遠方に住む家族が、自治体等と連携しながら見守りの状況を把握できる仕組みを整えることで、家族側の不安軽減にもつながると考えられます。
ただし、情報共有の範囲については、本人の同意や関係法令を踏まえた設計が必要です。
施策を継続するための運用視点
継続可能な見守り体制の構築
人口減少・職員数の制約の中で、長期的に見守りを継続するためには、人的な支援にデジタルツールを組み合わせることが重要になります。
システム導入には一定の費用が発生しますが、訪問調整・記録作業の効率化や、重篤化予防により将来的な負担軽減が期待できる部分もあります。
福祉人財不足への対応
「すべてを人手でカバーする」前提から、「人とデジタルの役割分担を整理する」前提に切り替えることで、限られた人財を、対面支援や相談対応など、より専門性・対人支援が必要な場面に集中させやすくなります。
デジタル見守りのリスクと留意点
メリットがある一方で、デジタル見守りには、事前に整理しておくべきリスクも存在します。導入検討にあたっては、次の点を庁内で共有しておくことが重要です。
取得する情報の範囲
位置情報、室温、電気使用量、生活リズム、健康状態に関する情報などは、本人の生活状況を詳細に推測し得るセンシティブな情報です。
必要な範囲に絞り込んだうえで、目的を明確にし、個人情報保護法や自治体の条例に沿った取り扱いが求められます。
本人同意の取得方法
利用開始時に、どのような情報を、どの目的で取得し、誰と共有するのかを、わかりやすい言葉で丁寧に説明したうえで、書面等で同意を得ることが重要です。
同意は一度限りではなく、運用内容の変更があれば、その都度説明・同意の見直しが必要となる場合があります。
第三者提供・情報共有の範囲
家族、民生委員、地域包括支援センター、委託事業者など、どこまで情報共有を行うのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。
提供先ごとに、共有する情報の範囲・目的を限定し、必要な同意・契約条項を整備することが求められます。
データ保管期間・削除ルール
見守りで取得したデータをどのくらいの期間保存するか、不要となったデータをどのような手順で削除するかについても、ルール化が必要です。
保存期間は目的に照らして適切な期間にとどめ、退会・死亡等の場合の取り扱いも含めて、事前に取り決めておくことが望まれます。
デジタルリテラシーへの配慮
高齢の方の中には、デジタル機器の操作に慣れている方もいれば、苦手な方もいます。
スマートフォンアプリの利用が難しい場合でも、固定電話の自動架電や、設置型のボタンなど、操作が簡便な手段を選べるようにしておくことが重要です。
機器トラブル時の対応体制
電源切れ、通信障害、機器故障などにより通知が止まる可能性があります。
その際に、どの部署・どの担当者が、どのような手順で対応するのか(例:機器の再送付・設置支援、アナログの見守りへの一時切り替え等)を、あらかじめ業務フローとして整理しておく必要があります。
夜間・休日の通知対応
異変通知は、夜間や休日にも発生する可能性があります。
通知の優先度(例:生命に関わる可能性があるもの・翌開庁日対応とするもの)を分類し、夜間・休日の連絡先や対応方法を、関係機関を含めて明確にしておくことが求められます。
「見守り」の目的の共有
高齢の方が「監視されている」と感じないよう、見守りの目的は、あくまで「安全確保」と「安心の提供」であることを丁寧に説明することが大切です。
「必要な時に素早く気づけるようにする」「離れて暮らす家族や地域の支えと連携する」といった観点を共有することが有効です。
デジタル格差への対応
デジタル機器を使う・使わないに関わらず、必要な方が支援から漏れない設計が重要です。
例として、デジタル見守りの対象としない場合にも、代替の訪問や電話による見守りを組み合わせるなど、複数の手段を用意しておくことが考えられます。
利用者の希望を尊重する仕組み
通知の頻度や共有先などについて、可能な範囲で本人の希望を反映できるようにすることで、納得感のある運用につながります。
運用開始後も、定期的に意向を確認し、必要に応じて設定を見直せる体制づくりが望まれます。
導入時の業務フローと庁内連携
デジタル見守りの導入にあたっては、福祉部門だけで完結するのではなく、庁内の複数部署との連携が前提となります。
庁内連携イメージ
支援担当
推進プロジェクト
DX推進担当
総務担当
推進プロジェクト
主な関係部署の役割イメージ
業務フロー設計のポイント
トラブル・緊急時の対応フロー
デジタル見守りシステムの運用では、異変検知後の迅速な対応、夜間・休日の体制整備、機器トラブルへの備えが不可欠です。以下に、それぞれの場面ごとの対応フローを整理します。
異変検知後の初動
センサーや自動架電で異変が検知された場合、以下の流れで対応します。
夜間・休日対応
開庁時間外の対応について、以下の3点を明確にしておく必要があります。
誰が・どこに連絡するかを明確化
ケースの判断基準を設定
翌営業日対応とする基準を整理
機器故障・誤検知への対応
導入検討に向けた比較軸と次のアクション
最後に、庁内で検討を進める際に参考となる主な比較ポイントを整理します。
1. アナログ併用か、完全デジタルか
| アナログ併用型 | 完全デジタル型 | |
|---|---|---|
| 概要 | デジタル見守りで全体を把握しつつ、定期訪問・電話・サロン活動等の対人支援を継続 | 訪問を最小限とし、デジタル機器による安否確認を中心に据える |
| メリット | 対面の安心感を維持しながらデジタルで効率化できる | 人員負荷を抑えやすい |
| 留意点 | 運用コスト(人件費+システム費)が二重にかかる面がある | 対象者の理解・納得や孤立感への配慮が必要 |
| 現状 | 多くの自治体で現実的な選択肢となっている | 慎重な検討が求められる段階 |
見守り範囲(安否のみか、健康管理を含むか)
安否確認中心
- 一定時間動きがない、電話応答がない等を通知する仕組み
- 比較的シンプルで導入しやすい
- 健康状態の変化を細かく把握することは難しい
健康指標を含む見守り
- 心拍・歩数・睡眠時間などのデータも取得するタイプ
- より詳細な状態把握が期待できる
※以下の点について慎重な整理が必要。
| 検討事項 | 内容 |
|---|---|
| 個人情報保護 | 取得情報のセンシティビティが高くなるため、適切な管理体制が必須 |
| 同意取得 | どの情報を・誰が・何の目的で取得するかを明確に説明する必要がある |
| データの解釈範囲 | 医療的な判断にどこまで活用できるか、責任範囲の整理が不可欠 |
対象者・地域特性に応じた設計
最適な仕組みは、地域ごとの状況によって異なります。
- 独居率・高齢化率
- 地理条件(中山間地域・島しょ部 等)
- 既存の見守り体制(民生委員・地域包括支援センター・NPO 等)
「他自治体と同じ仕組み」をそのまま導入するのではなく、自地域の状況に合わせて、対象者やサービス内容を調整することが重要です。
個別の状況に応じたご相談のおすすめ
高齢者見守りのデジタル化は、福祉・DX・財政・個人情報保護など、多くの論点が交差するテーマです。
本記事で全体像は整理しましたが、実際には、
- 自治体ごとの人口・地理・既存施策の状況
- 庁内体制や予算規模
- 住民のデジタル環境・ニーズ
によって、最適な設計は変わってきます。
- どこから検討を始めればよいか整理したい
- 既存の見守り体制と矛盾しない形でデジタルを組み込みたい
- 個人情報保護や庁内調整の論点を洗い出したい
といった段階からでも構いません。
まずは、貴自治体の状況をお伺いしながら、検討内容の整理をお手伝いする個別相談をご活用ください。
