近年、自治体におけるプレミアム付商品券(以下、プレミアム商品券)は、物価高騰対策や地域消費の下支え策として活用が広がっています。実務で悩ましいのは、「紙(冊子・紙券)」「電子(アプリ・Web)」「物理カード」をどれにするか、また併用するかという媒体・方式の選定です。
媒体選定を誤ると、住民の受益機会(申込・購入・利用)が確保できない、加盟店が集まらない、問い合わせが増える、精算事務が回らない、といった問題が連鎖し、事業効果にも説明責任にも影響します。
なぜ紙・電子(アプリ・Web)・物理カードなどの媒体選定が重要なのか
- 住民のデジタル格差により、申込・購入・利用が未達になる
- 加盟店募集が伸びず、利用率が上がらない
- 操作不明・例外対応が増え、問い合わせが急増する
- 回収・精算・突合の事務が逼迫し、スケジュールが崩れる
特に近年は、スマホ保有状況や本人確認手段の違いにより、「対象者であっても受け取れない/使えない層が生じる」こと自体が、監査・議会・報道の論点になり得ます。
媒体選定の基本方針 | 単一媒体に寄せ切らない
多くの自治体で実装可能性が高いのは、おおむね次のいずれかのパターンです。
電子を基本とし、紙・カードで補完
- 電子を基盤(台帳・管理の中心)として運用
- スマホ未所持者・操作に不慣れな層向けに、カードや紙を補完導線として併設
紙・カードを基本とし、電子を併用
- 紙(またはカード)を基本として発行
- 事務負担の軽減や利用実績の把握のために、電子を併用
なぜ「単一媒体」では難しいのか
DX推進の流れがある一方で、住民のデジタル環境・習熟度にはばらつきがあります。
そのため、単一媒体に寄せ切らず、受益機会(受領機会)を確保する設計のほうが、以下の点で有利になりやすいといえます。
- 運用の安定性:想定外のトラブルを回避しやすい
- 説明可能性:議会・監査等への説明が組み立てやすい
媒体の整理と「デジタル地域通貨(デジタル地域決済)」の位置づけ
紙・電子・カード・ハイブリッド | 実務での4類型
プレミアム付商品券の媒体は、実務上は次の4つの類型に整理できます。
| 類型 | 概要 |
|---|---|
| 紙(冊子・紙券) | 印刷物を配布・販売し、店舗で回収して精算する方式 |
| 電子(アプリ/Web) | スマホ等で表示・決済し、利用・精算をデータで管理する方式 |
| カード(物理カード) | スマホ未所持者の利用手段として提供する方式(裏側は電子台帳で管理する設計が多い) |
| ハイブリッド | 上記を併用し、住民属性・加盟店事情に応じて選択肢を持たせる方式 |
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「デジタル地域通貨(デジタル地域決済)」とは
自治体の施策説明で近年使われやすい概念が、デジタル地域通貨(デジタル地域決済)です。紙券を単発で配布するだけでなく、域内消費を促す「決済の器」として設計し、必要に応じて電子クーポンや地域ポイント等を組み合わせて運用します。
基本的な考え方 | 実務におけるメリット
- 紙の商品券の代替・補完として、域内消費限定の設計を取りやすい
- 施策(プレミアム付商品券、ポイント給付等)を、同一のデジタル台帳・決済基盤で運用できる
- スマホ未所持者には、物理カード等の「アクセス手段」を併設して受益機会を確保しやすい(ハイブリッド設計と相性が良い)
期待される効果(単年度で終わらせない観点)
- 運営コストの抑制(配布・精算・突合など事務負荷の軽減)
- 利用データの可視化・分析(KPI設計→改善のPDCAを回しやすい)
- 地域のキャッシュレス基盤整備への貢献(中長期での利便性向上・域内消費の促進につながる)
媒体別の留意点 | 実務で影響が出やすいポイント
紙/カード(アナログ導線)
- 幅広い層に直感的でわかりやすい
- 利用開始の心理的ハードルが低い
- 紛失・破損への対応
- 偽造対策の必要性
- 印刷・保管・配送コストの発生
- 再発行可否の整理
- 回収・精算事務の負荷
電子(アプリ/Web)
- 残高・利用履歴を一元管理しやすい
- 監査ログの確保や不正検知との相性がよい
- スマホ未所持者・操作に不慣れな層で「受領・利用できない」ケースが発生しやすい
- 通信環境や充電切れへの対応
- 操作不明時の店舗対応・事務局対応が増加する可能性
ハイブリッド(紙×電子+カード)
- 住民側のデジタル格差を吸収しやすい
- 加盟店側のオペレーション制約(紙のみ希望、端末運用負担など)にも対応可能
媒体が増えるほど、以下の設計が重要になります。
- 要綱の整備
- 周知方法の統一
- 精算フローの明確化
- 問い合わせ導線の整理
「どの媒体を、誰が、どこで、どう使えるか」を明確にしておくことが運用安定のカギです。
失敗を避けるための判断軸 | 媒体選定を「要件化」する7つの視点
媒体選定をメリット・デメリットの比較で終わらせず、次の7軸で要件化すると、庁内調整・委託調達・運用設計が進めやすくなります。
住民属性
- スマホ未所持率
- 高齢者比率
- デジタル操作に不慣れな層の規模
加盟店構成
- 個店比率
- IT耐性(端末操作への対応力)
- ピーク時の会計処理能力(レジ滞留リスク)
配布・販売導線
- 郵送/窓口/オンライン申請の選択肢
- 商工会等との連携可否
事務局体制
- 問い合わせ対応に割ける人員・時間
- 再発行・精算・加盟店支援のキャパシティ
スケジュール
- 開始までの準備期間
- 年度内執行の制約
- 広報期間・加盟店募集期間の確保
統制・不正対策
- 転売抑止策
- 本人確認の要否
- 監査ログの取得
- 照合・突合の要件
データ活用
- 利用実績を政策評価(効果検証)に用いる必要性
- 次年度改善へのフィードバック
実務における整理
「電子を台帳(管理の基盤)とし、紙/カードは住民のアクセス手段として補完する」
このように整理すると、受益機会の確保と事務効率の両立を説明しやすくなります。
ハイブリッド設計の要点 | 住民・加盟店・事務局の摩擦を最小化する
住民の受益機会を確保する
スマホ未所持者へのカード導線
スマホ未所持者向けの代表的な方式が、QRコード等を印字した物理カードを住民が提示し、店舗側端末で読み取って決済・チャージを行う方式です。
操作を店舗側が担うことで、利用開始時の負担を下げやすくなります。
コード決済の読み取り方式(2種類)
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| CPM(利用者提示方式) | 利用者がスマホ画面にコードを表示し、店舗が読み取る |
| MPM(店舗提示方式) | 店舗がコードを提示し、利用者が読み取る |

加盟店摩擦の低減
導入・会計・精算の負担を抑える
加盟店が負担を感じやすいポイントは、主に次の3点です。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 導入 | 端末準備、初期設定、登録手続の負担 |
| 会計 | レジオペレーション増、会計時間の伸長 |
| 精算 | 入金サイクル、精算手続の煩雑さ、差戻し対応 |
媒体選定の段階で「加盟店が継続参加できる条件」を要件として織り込むことが、加盟店率や利用率に直結します。
事務局摩擦の低減
問い合わせ先・例外・再発行を先に決める
- 問い合わせ窓口の分離:住民/加盟店/庁内で窓口を分け、FAQとテンプレ回答を事前整備
- 紛失・破損・再発行(紙・カード):可否/手数料/本人確認/再発行後の無効化まで要綱に明記
- 例外対応:本人が来庁できない、代理申請、災害時などを想定し、窓口運用の手順を固める
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「デジタル地域通貨」発想で差が付く | データ活用・PDCA・事業者選定の視点
「デジタル地域通貨」の発想には、以下ような効果が期待できます。
- 運営コストの抑制
- 消費行動のデータ分析が容易に
- 地域のカード決済インフラ整備への貢献(中長期的な狙い)
事業者選定のポイント
- コストや利便性
- 地元消費の拡大・地域経済活性化の観点で適切に運用される体制
- マネーロンダリング対策・セキュリティ対策(悪用防止)の運用状況
導入手順で詰まりやすい論点 | 先回りして要件化しておくべき項目
媒体にかかわらず、運用設計で特にトラブルになりやすい論点は次のとおりです。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 対象者/購入上限/利用期限 | 不公平感・混乱を招きやすい |
| 対象外品目 | 換金性の高い商品、公共料金等の扱い |
| 紛失・破損・再発行 | 特に紙・カードは事前整理が必須 |
| 問い合わせ導線 | 住民/加盟店/庁内の窓口分離、FAQ整備 |
| 精算・資金決済 | 締め処理、突合、差戻し時の再処理、監査ログの保全 |
紙×電子併用時の注意点
紙とアプリ(電子)を併用する場合、以下を要綱・利用規約・周知物で明確化しておくことが重要です。
- 「紙は紙として使用可能」とするのか
- 「アプリへ移行(チャージ)して利用する選択肢を持たせる」のか
弊社導入事例|「住民に届く」と「運用が回る」を両立する設計
プレミアム付商品券は、紙・電子・カードのどれを選ぶかで、住民の使いやすさだけでなく、庁内の事務負担(精算・問い合わせ・実績整理)も大きく変わります。
ここでは、検討の参考にしやすい事例を、ポイントを絞ってご紹介します。
岐阜県 養老町|スマホなしでも使える“物理カード併設”ハイブリッド
養老町では、アプリを基本導線にしつつ、スマートフォンをお持ちでない方に向けて「養老Payカード」を併設しています。カードを使って取扱店舗での現金チャージと決済ができるため、デジタルの管理・精算のしやすさを活かしながら、「対象者なのに利用できない」をできるだけ出さない設計になっています。
スマホ操作に慣れていない方にも配慮しやすく、結果として窓口・加盟店・コールセンターでの問い合わせを抑えやすい点も、運用面でのメリットです。

岐阜県 大垣市|“地域通貨基盤”として継続活用(商品券だけで終わらせない)
大垣市は、デジタル地域通貨「ガキペイ」を整備し、単発のプレミアム付商品券で終わらせず、施策に応じて活用を広げられる“基盤”として運用しています。
この形にすると、毎回ゼロから仕組みを作り直すのではなく、発行・精算・実績集計までの流れを一定の型で回しやすくなるため、事務負担を抑えながら次年度の改善にもつなげやすくなります。
「商品券を発行して終わり」ではなく、地域の取り組みを積み重ねていく設計として参考になる事例です。

福岡市・みなと銀座商店街振興組合|商店街が主体で回す「プレミアム付電子商品券」
「カモメPay」は、商店街振興組合が発行主体となって運用するプレミアム付電子商品券です。プレミアム率など条件を明確にし、地域内の取扱店舗で利用される設計になっています。
自治体の事業に限らず、商店街・商工団体など“地域の運営主体”が中心になって進める形も成立することが分かる事例です。地域の運用体制に合わせた選択肢として紹介しやすい内容です。

長崎市北部商工会|商工会が継続運用する「販売型デジタル商品券」
長崎市北部商工会の「トリコPay」は、地域経済の回復・事業者支援・消費者支援を目的に、プレミアム付電子商品券を継続的に運用している事例です。購入は専用サイト申込みとし、対象店舗も商工会エリアに限定するなど、地域内での利用を前提に設計されています。
自治体がすべてを抱えるのではなく、地域側の運営(商工会・商店街)と組み合わせて回すモデルとしても提示できます。

デジタルに寄せると“自治体の手間が減りやすい”ポイント(補足)
電子・デジタル寄りの運用にすると、利用実績や精算をデータでまとめやすくなるため、回収・突合・集計などの作業負担を軽くしやすい傾向があります。
「住民の使いやすさ」と「事務局の回りやすさ」を両立する観点で、ハイブリッドや地域通貨基盤の考え方が役立ちます。
方式決定後に追うべきKPI | PDCAで次年度改善につなげる
事業を「配布・販売して終了」とせず、効果検証や次年度改善につなげるために、最低限次のKPIを設計しておくと庁内説明を組み立てやすくなります。
| KPI | 内容 |
|---|---|
| 応募率/購入率/利用率 | 全体・属性別・地区別 |
| 加盟店率 | 業種別・エリア別、利用金額の偏り |
| 未利用残高(失効) | 規模・要因の把握 |
| 問い合わせ件数 | 住民/加盟店/庁内、主因分類 |
| 精算(入金)サイクル | 加盟店満足度に影響 |
「データ分析」やPDCAの文脈を先に置いておくと、方式選定が「単年度の事務」ではなく「改善可能な政策運用」として説明しやすくなります。
プレミアム商品券のハイブリッド式ならモバイル商品券プラットフォーム byGMO
モバイル商品券プラットフォーム byGMOとは
モバイル商品券プラットフォーム byGMOは、紙の商品券をスマートフォン上でデジタル化することができるキャッシュレスのプレミアム付き電子商品券です。地方自治体や地域の商店街、加盟店などで利用できる「チャージ式電子マネー」を提供し、導入コストと業務量を削減しながら電子地域振興券を開始することが可能です。
スマートフォンがなくても取扱店舗での現金チャージ(購入)と決済が可能に!

利用者の方が専用の会員カードやQRコードを取扱店舗で提示、店舗の端末で読み取ることで、スマホを使わずにデジタル商品券の現金チャージや決済が可能です。操作も取扱店舗が行うため、幅広い年齢層の人々が安心して利用できます。
\モバイル商品券プラットフォーム byGMOについて/
まとめ
今回は、プレミアム商品券に関する形式を説明しました。
「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」であれば、紙のプレミアム商品券を電子化することや、デジタルのみの商品券・地域通貨を紙で使用できるようになります。紙・デジタルと住民のニーズに応じて柔軟な選択をできるように導入してみてはいかがでしょうか。
\自治体が発行する紙のクーポンを電子化できるサービス /

