来年度の地域消費対策について、12月ごろまでに方針を固めたいものの、財源がまだ見えない。このような状況で、何から決めればよいのか悩んでいる自治体・商工会議所の担当者の方は少なくありません。
商品券・電子クーポンの導入パターンや、要件整理のお手伝いについては、お気軽にお問い合わせください。検討の初期段階からご相談いただけます。
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デジタル商品券・電子クーポンとは
この記事では、住民が購入して使うものを「デジタル商品券」、自治体が無償で配布するものを「電子クーポン」と呼び分けます。どちらも、紙の商品券が担ってきた役割をデジタルで実現する手段として、各地で導入が進んでいます。
財源が見えない今こそ、方針の整理を早めたい理由
物価高が続くなか、生活者の負担軽減と、地域の店舗の売上を支えることを両立できる施策が求められています。商品券や電子クーポンは、この二つを同時に狙える手段の一つです。
ただし、実施までには準備の期間が必要です。対象者の決定、加盟店の募集、システムの選定、契約、住民への周知など、多くの工程があります。
来年度の財源について、いまわかっていること・わからないこと
公表資料で確認できること
国の公表資料から確認できる点は、次のとおりです。
- 令和9年度の国の予算は、現時点で概算要求の段階です(財務省 令和9年度予算)。
- 内閣府の概算要求では、地域未来交付金等について、事項要求と合わせて2,000億円を要求するとされています。令和8年度の当初予算額は1,600億円です。
- 同じ資料には、新たな支援内容について、対象事業や事業規模が現時点で未確定であることが記載されています。金額を明示しない事項要求とし、具体的な内容は予算編成の過程で検討するとされています(内閣府 令和9年度予算概算要求の概要(PDF))。
まだ決まっていないこと
令和9年度に、重点支援地方交付金が今年度と同じ形で措置されるかどうかは、確認できた公表資料の範囲では示されていません。
今年度分については、各自治体が現に活用しており、内閣府が活用状況を公開しています(内閣府 物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金)。
つまり、「来年度は使えない」と決まっているわけではありません。一方で、「使える」と決まっているわけでもありません。この見通しの立たない状態を前提に、方針を組み立てる必要があります。
財源シナリオ別の考え方
財源を一つに決め打ちせず、複数のシナリオを並べて考える方法があります。以下は考え方の一例であり、確定した情報ではありません。
国が物価高対策の交付金を再び措置した場合
- 想定される内容:過去の推奨事業メニューには、プレミアム商品券、電子クーポン、地域ポイントなどが例示されている
- 考え方のポイント:措置された場合に備え、方式の候補を先に絞っておく
地域未来交付金など、別の制度を活用する場合
- 想定される内容:対象事業や規模は未確定。生活機能の維持・改善、地方の魅力向上に向けた取組を支援する類型も示されている
- 考え方のポイント:商品券事業に使えるかは、その年度の要件で判断する。システムなど基盤整備の補完として検討する
自治体独自の財源で実施する場合
- 想定される内容:対象や規模を絞った施策になりやすい
- 考え方のポイント:対象者限定のクーポンやポイント還元など、小さく始める設計と相性がよい
購入型で住民の購入代金を活用する場合
- 想定される内容:公費負担は主にプレミアム分と運営費
- 考え方のポイント:抽選・入金・発券など、事務の設計が重要になる
シナリオAの推奨事業メニューについては、内閣府が地方公共団体向けのQ&Aや事務連絡を公開しています(内閣府 物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金 地方公共団体向け文書及び資料)。
財源が決まる前に、12月までに決めておきたい7つのこと
- 目的の優先順位:生活者の負担軽減、消費喚起、特定業種の支援、中小店への誘導のうち、何を重視するか
- 対象者:全住民、対象を絞った世帯、購入を希望する方のどれにするか
- 利用先:市内限定とするか、中小店専用の枠を設けるか、対象外とする商品はあるか
- デジタル機器に不慣れな方への対応:紙との併用、QRカード、店舗側が読み取る方式、操作の支援窓口の要否
- 加盟店の募集条件:参加条件、必要な機器、手数料、精算方法、問い合わせ窓口
- 効果を測る指標:利用率、加盟店数、中小店での利用比率、業種別の利用額など
- 予算が成立しない場合の対応:縮小案、契約の条件、開始を判断する日
「7つの項目を、自団体の状況に合わせて整理したい」という場合は、要件整理からお手伝いしています。お気軽にお問い合わせください。
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方式の選び方:購入型・給付型・ポイント還元型
方式は、目的と財源の性格に合わせて選びます。以下は、各方式の特徴を相対的に整理したものです。効果の大きさを順位づけしたものではありません。
| 方式 | 特徴 | 公費の負担 | 事務の負担 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|---|
| 購入型(プレミアム付き) | 住民の自己負担を伴うため、購買を後押ししやすい | 中 | 中~高 | 限られた予算で消費を促したい |
| 給付型(無償の電子クーポンなど) | 購入資金が不要で、幅広い世帯に届きやすい | 高 | 高 | 広く生活を支援したい |
| ポイント還元型 | 実際の購入を条件にでき、執行額を利用実績と連動させやすい | 中(変動) | 中 | 既存の決済の仕組みがある |
いずれの方式でも、発行した金額と、実際に増えた消費額は同じではありません。利用率だけで効果を判断せず、指標を組み合わせて見る視点が大切です。
また、基盤を一度整えておけば、財源に応じて方式を載せ替えることができます。次に紹介する大垣市は、その考え方に近い事例です。
デジタル化のメリットと注意点
運営側(庁内・加盟店)のメリット
- 発行、残高管理、精算の情報が一つの台帳にまとまり、集計の手間を減らせる
- 利用実績を、店舗別・業種別・地域別に把握しやすい
- 紙の印刷、配送、換金にかかる作業を減らせる可能性がある
住民のメリット
- スマートフォンで購入・受け取り・利用ができ、窓口に出向く負担を減らせる
- 利用できる店舗や残高をその場で確認できる
注意したい点
デジタル化には、注意すべき点もあります。
- デジタル機器に不慣れな方に配慮し、紙との併用や、操作を支援する窓口を検討する
- 不正利用や重複利用を防ぐため、本人確認や二重利用の防止策を設計する
- 加盟店の募集、問い合わせ対応、精算など、運用の負担が生じる
デジタルにすれば運用の負担がなくなる、というわけではありません。運用の設計まで含めて検討することが重要です。

導入事例に見る設計の違い
各地で実施された商品券・電子クーポンの事例を整理しました。視点は「誰に、どのように配り、地域内の利用をどう設計したか」です。いずれも当サイトの導入事例をもとにしています。
山口市|商工会議所・商工会が実行委員会で実施する購入型
山口市では、山口商工会議所、山口県央商工会、徳地商工会で組織する実行委員会が、プレミアム率20%の商品券を発行しました。デジタル版は、ウェブアプリで購入し、支払いはクレジットカードまたはコンビニで行います。購入は1人5セットまでです。

大垣市|商品券で終わらせず、地域通貨の基盤として活用
大垣市は、デジタル地域通貨「ガキペイ」を整備し、施策に応じて活用の幅を広げています。物価高騰対策としては、全市民に7,000円分の「ガキペイカード」を配布しました。カードの残高は、アプリへ移行して使うこともできます。移行後はカードで支払えなくなるため、二重利用を防ぐ仕組みにもなっています。
この基盤は、プレミアム付商品券や、子育て応援ギフトのポイントとしても使われています。毎回ゼロから作り直さず、財源に合わせて載せ替える発想の参考になります。


釧路市|申請不要のプッシュ型給付で、事務の負担を減らす
釧路市は、基準日(令和8年4/15)に住民登録がある世帯の世帯主へ、QRコードを印刷した圧着ハガキを送りました。申請は必要ありません。決済の方式は、店舗の端末でハガキのQRコードを読み取る「ハガキ型」と、住民が店舗のQRコードを読み取る「アプリ型」の2種類です。
導入前の担当者のコメントでは、過去の紙の商品券や現金給付で、申請の受付、目視での確認、商品券の集計・換金など、事務のコストが大きかったことが挙げられています。今回の方式では配付と換金の事務が減り、その分を給付額に回せたと紹介されています。
一方、全市民を対象としたデジタル給付は初めての取り組みで、開始当初は問い合わせが相次ぎました。問い合わせ用の回線を増やして対応し、落ち着いたと紹介されています。利用状況をダッシュボードでリアルタイムに把握できたことも、状況に応じた対応に役立ったそうです。

越谷市|紙とアプリの併用と、加盟店の負担を下げる工夫
越谷市は、全住民を対象とした電子クーポン「がやポン」を実施しました。担当者のコメントによると、高齢の方などのサポートが最大の課題だったため、紙媒体を配付しつつ、希望者はアプリでも使えるようにしました。
加盟店の募集では、事業者登録および換金に係る手数料がかからない設計としました。加盟店側がコードを読み取る「ストアスキャン方式」は端末の準備が必要ですが、インターネットに接続でき、QRコードを読み取るカメラが付いていれば、手持ちのスマートフォンやタブレットでも対応できます。
紙の商品券では、換金のときまで利用状況がわかりませんでした。電子クーポンでは「いつ・誰が・どれくらい」使ったかをリアルタイムで確認でき、これも強みとして挙げられています。


長崎市北部商工会|商工会が継続して運用する購入型
長崎市北部商工会の「トリコPay」は、地域経済の回復、事業者の支援、消費者の支援を目的に、プレミアム付電子商品券を継続して運用している事例です。購入は専用サイトで申し込み、対象店舗も商工会のエリアに限定しています。地域内での利用を前提にした設計です。

事例から読み取れる三つのポイント
一つ目は、運営主体を自治体に限らない選択肢があることです。山口市の実行委員会や、長崎市北部商工会の例のように、地域の経済団体が中心となる形も成り立ちます。
二つ目は、事務や参加の負担を抑える設計です。釧路市は事務コストを給付の原資に回し、越谷市は事業者登録・換金に係る手数料がかからない設計としました。
なお、事例の詳細は、各導入事例のページでご確認ください。
導入前に確認したい法務・運用上のポイント
資金決済法の確認
電子的な商品券は、発行方法によって、資金決済法が定める前払式支払手段に該当する場合があります。一般に、金額などの財産的価値が記録され、対価を得て発行され、商品やサービスの代価の支払いなどに使用できるものが対象となります。
一方、国または地方公共団体が発行するものや、発行の日から6ヵ月以内に限って使用できるものなどは、前払式支払手段に関する規制の適用除外となります。発行主体、対価の有無、利用できる範囲や期限などによって判断が変わるため、調達の前に法務担当者や専門家へ確認することをおすすめします(e-Gov法令検索 資金決済に関する法律、金融庁 FinTechサポートデスク)。
個人情報の取り扱い
住民基本台帳を使った配布、本人確認、アプリの会員情報、加盟店の口座情報など、事業によっては多くの個人情報等を扱います。委託先を通じて情報を取り扱う場合は、委託の範囲、アクセス権限、ログの管理、再委託、データの削除、事故時の報告などについて、個人情報保護法や各団体の規程等に照らして仕様・契約で整理しておくことが重要です(個人情報保護委員会 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編))。
予算の成立前に手続きを進める場合
予算の成立前に公募や事業者の選定を進める場合は、議会で予算が否決または減額されたときの扱いを、あらかじめ決めておく必要があります。公募の条件、予算成立の条件、契約の締結日を整合させ、契約書にも反映しておくことが大切です。
利用期限と払い戻しの扱い
未使用分の扱いは、住民が混乱しやすい点です。利用期限、払い戻しの有無、紛失時の再発行、転出、加盟店の廃業などについて、規約と住民向けの案内の両方に明記しておくと安心です。
補足:飲食料品の消費税率引き下げ方針
今後の消費行動に関わる動きとして、頭の片隅に置いておきたい情報があります。
政府は2026/09/15、2027年4月から2年間、飲食料品の消費税率を1%に引き下げる方針を盛り込んだ大綱を閣議決定しました。対象は現在の軽減税率の対象となっている飲食料品で、外食と酒類は対象外です。
ただし、この内容は今後、法案が国会で可決・成立した場合のものです。実施されれば、店舗の価格設定や住民の消費行動に影響する可能性があります。現時点では影響を見通せませんが、来年度の施策を考えるうえで、意識しておきたい動きです(国税庁 消費税率引下げ特設サイト)。
まとめ:財源が決まる前にできること
来年度の財源は、現時点では確定していません。しかし、財源が見えない状況でも、進められる準備はあります。
- 公表資料で「わかっていること」と「決まっていないこと」を分けて把握する
- 財源のシナリオを複数用意し、どの場合でも共通する準備を先に進める
- 目的、対象者、利用先、加盟店、指標、予算不成立時の対応を、12月までに整理する
- 事例を参考に、運営主体、デジタル機器に不慣れな方への配慮、運用の設計までを含めて検討する
財源が決まってから慌てて動くのではなく、決まった時点ですぐに方式を選べる状態を整えておくことが、地域の消費を支える施策を切らさないための現実的な備えになります。
モバイル商品券の導入パターンや、財源が決まる前の要件整理について、ご相談を受け付けています。デモでの体験や、お気軽にお問い合わせください。
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※本記事は2026/09/30時点の公表情報にもとづいています。制度の内容は変更される可能性があるため、最新の情報は各公式ページでご確認ください。
